チャウ・シンチー(周星馳)が『カンフーハッスル』に続いて送り出したのが『ミラクル7号(長江7号)』です。公開前は、シンチー(星爺)が宇宙人を通してスティーヴン・スピルバーグにオマージュを捧げている点に注目が集まっていました。実際には、『E.T.』の濃厚な雰囲気を感じさせるのはごく一部に過ぎません。彼の初期作品に比べれば、『ミラクル7号』でのオマージュなど些細なものです。シンチーは映画の題材やその処理において、方向性を転換させました。ギャグは『少林サッカー』や『カンフーハッスル』の時のような強引さや違和感がなくなり、『ミラクル7号』では熟考されたものになっています。劇中でディッキー(小狄)が夢を見るシーンには、『少林サッカー』や『カンフーハッスル』の名場面が盛り込まれており、両作を見た観客なら思わずニヤリとしてしまうことでしょう。『カンフーハッスル』ではやりすぎで不快感さえ催した(少なくとも筆者はそう感じた)いじめのシーンも、今回はかなり控えめになっています。本作では温かい人情ドラマの要素が強まり、物語性が増していますが、笑いの比重も失われてはいません。
こうした進歩は、シンチーが『ミラクル7号』において演技面で一歩引いた位置にいることと関係しているのかもしれません。その分、映画の改善点について思索する時間が増えたのでしょう。シュー・チャオ(徐嬌)は、男装しての演技だけでなく、そのパフォーマンスも非常に素晴らしく、不自然さがありませんでした。ナナちゃん(CJ7/7仔)のデザインは可愛らしく愉快で、笑いを誘います。香港映画も、ディズニーやハリウッドのアニメーションに匹敵するキャラクターを作り上げることができたのです。シンチーが表舞台から少し退いたことで、脇役たちの出番が増え、その多くが良い演技を見せています。反対に、ヒロインのキティ・チャン(張雨綺)は出番が少なく、目立った活躍も見られませんでした。
