ケレン・アン(Keren Ann)が「ル・フレンチ・メイ(Le French May)」に参加したことは、フレンチ・ロマンチシズムを愛する多くのファンにとって、願いが叶った瞬間でした。2回の公演のうち、パフォーマンスは初日の方が優れていました。両夜とも2人のバンドメンバーを従えての出演で、ケレン自身もギターを弾き、「Chelsea Burns」や「Lay Your Head Down」ではハーモニカも披露しました。アンコールでは、彼女にしては珍しいアップテンポな曲であるジョニ・ミッチェルの「Big Yellow Taxi」をカバー。ラストの曲「Manha De Carnaval」を歌う際には、ステージの照明をすべて消すようリクエストし、暗闇の中でアカペラで歌い上げました。それは自身の歌声に対する絶対的な自信の表れでした。ケレン・アンの楽曲はスローで叙情的なものが多いため、彼女の曲に馴染みのない人は退屈に感じるかもしれませんが、少しテンポの速い曲(「Lay Your Head Down」など)では、会場の観客も一緒になって手拍子をしていました。2日目の公演では、ケレンはよりお喋りで、MCも多くなり、観客に現地の言葉(方言)を教えてほしいと頼む場面もありました。学んだ言葉を他の公演国へ持っていきたいとのことでした。
昨年のル・フレンチ・メイはエミリー・シモン(Emilie Simon)を招き、今年はケレン・アンを招きました。共にフランス音楽界で有名なシンガーであるため、比較されるのは避けられません。エミリー・シモンのパフォーマンスがライブ・サンプリングを多用し多様性に富んでいたのに対し、ケレン・アンは歌そのものでファンを感動させました。2人にはそれぞれの良さがあります。香港のファンにとって、ケレン・アンのパフォーマンスはある種の「情意結(センチメンタルな愛着)」、つまりフレンチ・ロマンチシズムへの愛着そのものでした。
フランス・アライアンス(主催者)にとって、来年のル・フレンチ・メイは頭の痛い問題を抱えることになりそうです。2年連続で歌姫クラスの大物を招いてしまった今、来年は一体誰を呼べばいいのでしょうか?
